11日目では「空即是色」——固定した実体がないからこそ、いろんな形に変化できるという話を学びました。

 

今日はその続きです。

「受想行識、亦復如是(じゅそうぎょうしき、やくぶにょぜ)」

現代語訳:「受・想・行・識についても、まったく同じことが言える」

 

ここまで「色(身体・物質)」について見てきた「空」の話が、いよいよ心の働きにも広がっていきます。

 



5日間かけて学んだ「五蘊」を思い出そう

8日目で学んだ「五蘊(ごうん)」、覚えていますか?

人間を構成する5つの要素でしたね。

 

色(しき)——身体・物質的なもの

受(じゅ)——感じること(感覚・感受)

想(そう)——イメージすること(意味づけ・認識)

行(ぎょう)——意志・心の動き・衝動

識(しき)——判断・識別する意識

 

10〜11日目で詳しく見てきたのは、この中の「①色」についてでした。

「色即是空、空即是色」——身体や物質には固定した実体がない、という話です。

 

今日のテーマは、残りの「②受・③想・④行・⑤識」——つまり心の働き全部です。

 

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感覚(受)も、固定していない

「受」は、感覚や感受——暑い・寒い・痛い・嬉しい・悲しいといった、外からの刺激を受け取る働きでしたね。

 

この「受」にも、固定した実体はありません。

 

たとえば、今すごく辛い痛みを感じていても——

  • その痛みは1時間後には和らいでいるかもしれない
  • 同じ刺激でも、疲れているときと元気なときで感じ方が変わる
  • 「痛い」という感覚も、ずっと同じ強さで続くことはない

 

「今のこの感覚が、ずっと続くわけではない」——それが「受も空である」ということです。

 

お遍路で足が痛くてどうしようもなかったとき、「この痛みはずっと続く」と思い込んでいたら、きっと心が折れていたと思います。

でも実際は、休めば和らぎ、また歩けば違う痛みに変わっていく——感覚は常に変化していました。

 

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意味づけ(想)も、固定していない

「想」は、感覚をもとに頭の中で作り出すイメージや意味づけでしたね。

 

「あの人は冷たい人だ」
「自分はダメな人間だ」

——こういう意味づけも、実は固定したものではありません。

 

同じ出来事でも、時間が経てば見方が変わることがあります。

当時は「冷たい」と感じた人の言葉が、後になって「実は心配してくれていたんだ」と気づくことも。

 

「想(意味づけ)」は、一度決まったら変わらないものではなく、新しい情報や視点によって変化していくものなんです。

 

リハビリの現場でも、「自分にはもう何もできない」という意味づけを抱えていた患者さんが、

小さな成功体験を通じて「やればできることもあるんだ」と意味づけを変えていく場面をよく見ます。

 

意味づけが固定していないからこそ、その変化が可能になるんです。

 

意志・衝動(行)も、固定していない

「行」は、意志や衝動——

「こうしたい」「これが欲しい」「これが怖い」という心の動きでしたね。

 

「絶対にこうじゃなきゃダメだ」という強い気持ちも、永遠に続くわけではありません。

 

たとえば——

  • 若いころ「絶対に手放したくない」と思っていたものが、今は気にならなくなっている
  • かつて強く望んでいた目標が、状況が変われば優先度が下がることもある
  • 「これが怖い」という気持ちも、経験を積むことで和らいでいく

 

執着や欲望、恐れといった「行」も、実は固定したものではなく、常に揺れ動いているものです。

このことが分かると、「この欲望や執着に一生縛られ続ける」という思い込みから、少し自由になれます。

 

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判断・意識(識)も、固定していない

「識」は、対象を識別し、判断する意識でしたね。

「これは正しい」
「これは間違っている」
「これは自分、これは他人」

——そういう区別をする働きです。

 

この「識」も、固定したものではありません。

 

子どものころ「正しい」と思っていたことが、大人になって考え方が変わることがあります。

知識や経験が増えるほど、判断の基準そのものが変化していくんです。

 

「絶対にこれが正しい」という判断も、実は一時的なもの

——その前提を持っていると、人との違いにも少し寛容になれる気がします。

 

心の働きすべてが「空」だと知る意味

色(身体)・受(感覚)・想(意味づけ)・行(意志)・識(判断)。

五蘊のすべてに、固定した実体はありません。

 

これが分かると、何が変わるのでしょうか。

 

「今の感じ方」
「今の意味づけ」
「今の気持ち」
「今の判断」

——どれも、永遠に固定されたものではない。

 

苦しい感情に飲み込まれているとき、「この苦しさはずっと続く」と思い込んでしまいがちです。

でも五蘊すべてが空であると知っていれば、「この感情も、この考え方も、いつか必ず変化する」と少し距離を置いて見ることができます。

 

リハビリ現場で大切にしている「心の変化」

作業療法士として、心の動きが変化していく過程に立ち会うことがよくあります。

 

最初は「もう何もできない」と感じていた方が、リハビリを重ねる中で——

感覚(受)が変わり、意味づけ(想)が変わり、意志(行)が変わり、判断(識)が変わっていく。

 

身体だけでなく、心の働きそのものが「空」だからこそ、その変化が起こるんです。

 

この視点を持っていると、「今この方はこう感じているけれど、これは固定された状態じゃない」と思いながら関わることができます。

それが、希望を持って寄り添うことにつながっているのかもしれません。

 

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今日のまとめ

お疲れさまでした。

今日は「受想行識、亦復如是」——受・想・行・識についても色と同じことが言える、という部分を学びました。

感覚・意味づけ・意志・判断、心の働きのすべてに固定した実体はないということ。

今日一番伝えたかったのは、「今のこの感情も、この考え方も、いつか必ず変化する」という視点が、苦しみに飲み込まれないための支えになるということです。

 

  • 受(感覚)も空——今の痛みや感覚は、ずっと続くわけではない
  • 想(意味づけ)も空——意味づけは新しい視点で変化していく
  • 行(意志・衝動)も空——執着や恐れも、永遠に固定されたものではない
  • 識(判断)も空——「絶対に正しい」という判断も一時的なもの
  • 五蘊すべてが空だと知ると、感情に距離を置いて見られるようになる

 

次回13日目は「不生不滅——生まれることも滅することもない、その意味」です。

「生まれる」「滅する」という当たり前に使っている言葉、実はもっと深い意味が込められています。

お遍路で食べたあのおにぎりが、実は「生まれても滅してもいない」と知ったら——きっと見え方が変わるはずです。

お楽しみに😊